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成年後見制度が変わります 〜本人の意思を尊重し、利用しやすい制度へ〜

高齢化の進展に伴い、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方を支援する「成年後見制度」の重要性が高まっています。一方で、現行制度については「一度利用すると原則として本人が亡くなるまで続く」「本人の能力回復や状況変化に柔軟に対応しにくい」といった課題が指摘されてきました。

こうした課題を受け、2026年(令和8年)6月17日、成年後見制度を見直す改正民法が成立しました(6月24日公布)。今後は本人の自己決定権をより尊重し、必要な支援を、必要な範囲で、必要な期間だけ利用できる制度へと変わります。本コラムでは、改正のポイントをわかりやすく解説します。

成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方について、家庭裁判所が選任した成年後見人等が財産管理や契約手続を支援する制度です。

現行の制度には、本人の判断能力の程度に応じて次の3つの類型があります。

  • 後見(判断能力を欠く常況にある方)
  • 保佐(判断能力が著しく不十分な方)
  • 補助(判断能力が不十分な方)

また、将来の判断能力低下に備えて、あらかじめ支援者と契約を結んでおく「任意後見制度」も設けられています。

現行制度の課題

成年後見制度は重要な役割を果たしている一方で、利用者やそのご家族から次のような声が挙がっていました。

1. 利用期間が長期化する

成年後見人が選任されると、本人の判断能力が回復しない限り、制度の利用が続きます。そのため、数年から十数年に及ぶケースも少なくありません。

2. 本人の意思が十分に反映されにくい

制度の目的は本人保護ですが、実務上は財産の保全が重視される傾向があり、本人が望む生活や資産の活用との調整が課題となっていました。

3. 必要以上に権限が広くなる場合がある

たとえば、不動産の売却や施設入所の手続のために制度を利用したにもかかわらず、その後も包括的な後見が続くケースがあります。

改正のポイント

改正前は後見・保佐・補助の3類型、改正後は補助に一本化され必要な範囲で権限を付与

1. 「後見」「保佐」を廃止し、「補助」に一本化

改正法では、後見・保佐・補助の3類型のうち後見と保佐が廃止され、「補助」に一本化されます。包括的な代理権を一律に与えるのではなく、遺産分割や不動産の売却など、本人に必要な事項について個別に権限を付与する仕組みになります。

なお、判断能力をほぼ常に欠く方については、「特定補助」という特則が設けられ、預貯金の払戻しや不動産の売買など重要な財産行為を取り消せるようにして、本人を保護する仕組みも用意されています。

2. 必要がなくなれば終了できる

現行制度は原則として本人が亡くなるまで継続、改正後は目的を達成すれば終了できる

現行制度では、一度開始すると原則として継続して利用することになります。改正後は、本人の判断能力が回復していなくても、家庭裁判所が「支援の必要がなくなった」と認めれば、利用を終了できるようになります。

これにより、「自宅を売却するためだけに利用したい」「遺産分割の手続が終わるまで利用したい」といったニーズにも対応しやすくなります。

3. 本人の意思決定支援の重視

今回の見直しの大きな柱の一つが「意思決定支援」です。支援者が本人に代わって判断するのではなく、

  • 本人の希望を丁寧に確認する
  • 本人が自ら選択できるよう支援する

という考え方がより重視されます。国際的にも、障害者権利条約の理念に沿った制度運用が求められており、本人主体の支援への転換が進んでいます。

4. 後見人等の交代・報酬の見直し

本人の利益のために特に必要があるときは、支援者を交代しやすくなります。また、支援者の報酬についても、実際に行った事務の内容などを考慮して決める方向が明確にされました。

任意後見制度にも注目

成年後見制度の改正とともに、「任意後見制度」の活用も注目されています。任意後見制度は、判断能力が十分なうちに将来の支援者を自ら選び、公正証書で契約を結んでおく制度です。

将来に備え、

  • 誰に支援を任せるか
  • どのような支援を受けたいか

を自分で決められる点が大きな特徴です。今回の改正では任意後見についても、予備の受任者を定めておけるようにするなど、より使いやすくするための見直しが行われています。

いつから変わるの?

改正法は、公布の日(2026年6月24日)から2年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日に施行されます。具体的な施行日はまだ決まっていません(本コラム公開時点)。施行までは現行の制度が適用されますので、いま手続が必要な方は現行制度を前提にご検討ください。

まとめ

成年後見制度は、判断能力が不十分になった方の権利と財産を守る重要な制度です。今回の改正により、「本人の意思を尊重しながら、必要な支援を必要な期間だけ利用する」という考え方が制度に反映されることになりました。

成年後見制度や任意後見制度の利用を検討されている方は、早い段階で専門家へ相談し、ご自身やご家族に合った備えをしておくことが大切です。

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参考:法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」

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