相続で注意するべき「遺留分」とはBy 丸山 主税 / 2024年8月30日 前回は遺言書の重要性と作成のポイントについてお話させていただきましたが、今回は関連して「遺留分(いりゅうぶん)」についてご説明したいと思います。本来、財産をどのように処分するかは、本人の自由というのが大原則ですが、実は法律によって最低限、相続人の間での公平を図る制度があります。それが「遺留分」制度です。 財産は生きている間は当然のこと、死亡した後の処分方法についても自由に決めることができます。代表的なところでいうと、死亡した後の処分は、遺言によって行うことが可能です。遺言は遺言者自身だけが作成でき、相続人の意見を考慮する必要はありません。しかしながら、相続人の法的安定性にも一定の配慮が必要であり、遺言による財産処分には何ら制限がないというわけではないのです。 例えば、被相続人である男性が土地と建物を所有して、妻と一緒に住んでいたとしましょう。 男性が「土地と建物を愛人に遺贈する」旨の遺言書を作成して亡くなった場合、土地と建物は、遺言通り愛人のものになります。場合によっては、妻は家から出て行かなければなりません。また、住み続けるにしても、その対価を愛人に支払わなければならないケースもあります。 住居は生活の基盤となる最も重要なものですから、そこを失うことになったら、妻は著しく酷な状況に置かれてしまいます。人情的に考えても、多くの人が妻の肩を持つでしょう。 そこで、出てくるのが遺留分制度です。被相続人である男性は、相続人である妻のために一定の相続財産を留保しておく必要があります。 また、この留保された相続財産を愛人によって侵害された場合、妻はその分を取り戻すことができるのです。この取り戻す権利のことを「遺留分減殺請求権(いりゅうぶん・げんさいせいきゅうけん)」と言います。あくまで権利ですので、この権利を行使しなくても構いません。 遺留分を主張できる者と遺留分の割合 遺留分を主張することができる者は、「配偶者」「子」「直系尊属」だけで、兄弟姉妹は含まれていません。 遺留分減殺請求の期間制限 遺留分減殺請求権は、遺留分減殺請求することができる者が、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知ったときから、1年で時効消滅します。この遺留分減殺請求権は、強行法規であるものの、法的安定性の観点からは、かなり短い時効期間となっています。時間的な側面からも、権利を行使する人と、される人との利害の調整も図られているわけです。 ポイントとしては、誰が遺留分の権利を行使できるのか、その割合と期間についてだけでも最低限、覚えておきましょう。